なぜ、こんなことになったのか?
理由は2つ考えられます。
2.登記に対する専門性の低下
理由1.仕事の減少
25年前の平成4年と平成28年を比較してみましょう。
結論から言うと、司法書士一人あたりの登記件数は半減しています。
司法書士数は
平成4年は約1万6500人
平成28年は約2万2000人
と約5500人、約33%増えています。
一方で、不動産登記の申請件数は
平成4年は1895万件
平成28年は1164万件
と約731万件、約39%減っています。
司法書士一人あたりの登記件数で換算すると
平成4年は1149件/年
平成28年は529件/年
と半分以下の54%減となっています。
つまり、一人ひとりの司法書士の仕事が平均で半分以下になってしまったわけです。
例えば、平成4年に年間の売上げが2000万円だったとしましょう。
仮に経費が800万円とすれば、年収は1200万円。
1200万円から税金が3~4割取られたとしても、手取りで毎月60万から70万円になります。
そこそこ余裕を持った暮らしができるでしょう。
一方で、同じ人が、平成28年に売上げが半減して、1000万円になるとどうなるか?
経費はそんなに変わらないので同じく800万。
そうすると年収はわずか200万しかなくなります。
税金や保険が少し取られると毎月の手取りはわずか15万円です。
これではとても生活できません。
おそらく、年金との合算で生活することになるのでしょう。
H4:40歳 ⇒ H29:65歳
理由2.登記に対する専門性の低下
現代はネットがあるので、すぐに何でも調べられます。
登記も同じ。
ちょっと調べれば申請書の書き方はすぐ出てきます。
それどころか、登記申請を受け付けている法務省が申請書の書き方を公開しているくらいです。
昔はパソコンすらありませんでした。
申請書は縦書きで、数字は多角文字(壱、弐、参、ってやつね)で書く必要がありました。
法務局の職員も、登記のやり方を丁寧に教えてくれるなど、とても考えられませんでした。
簡単な登記でも「書式精義」なんていう、買ったら10万円以上かかる書式集がないととても手が出せるものではありませんでした。
そのような時代ですから、司法書士は登記の「先生」だったんですね。
でも今は、
・法務局に行けば申請書の書き方をていねいに教えてくれる
・申請書も横書きOKで、誰が見てもすぐわかる形になっている
などなど、登記が実に簡単なものになりました。
しかも、登記は誰がやっても結果が同じです。
所有権の移転なら、どんな大先生がやっても、素人がやっても、買主の名前と住所が登記簿に入るだけ。
結果は変わりません。
つまり、登記に専門性がなくなってしまったのです。
いや少なくとも、昔は自分ではほぼ無理だった登記が、現在はがんばれば自分でもできるものになりました。
このように
そもそも、件数が半減して、専門性が認められなくなってしまった登記を主な生業としている司法書士は社会的に存在価値が低くなってしまったのかも知れません。
個人事務所は登記では喰えないのか?
25年前は司法書士の法人がありませんでしたから、今のような大規模に大量に仕事を持って行く事務所はありませんでした。
つまり、タダでさえ仕事が少なくなったのに、現在は、一部の大規模事務所に大量に登記の仕事が持って行かれてしまっています。
このような大規模事務所は、銀行OBや不動産業者OBを雇用して、大々的に営業をかけています。
こんなやり方をしているんですよ。
個人事務所が、かなうはずがありません。
また、統計データには出てきていませんが、近年は本人申請の割合が増えています。
理由はインターネットですぐ調べられるから。
ですから、司法書士が関与した登記件数はさらに下がっているはずです。
このように、
・大規模事務所に仕事が集中
・本人申請が増える
これでは、個人で開業する若手はとても満足に仕事をつかめません。
しかも司法書士は登記の専門性は高くても、営業やプレゼンは苦手な人が多い。
そんな人が仕事がつかめなければ真っ先に行うのが「安売り」。
「うちは安くしますので仕事ください」
となるわけです。最悪です。
事実、抹消1件3000円なんて事務所もあるくらいです。
このような現状の結果として、
・若手は決済代行しか仕事がない(大規模事務所の下請け)
・銀行の担当者からバカにされる
・業者に報酬をピンハネされる
など、とてもつらい思いをする司法書士(特に若手)が増えてしまったのです。
日司連に一言
ちょっと横道にそれますが、一言、言わせてください。
これを書いている平成29年6月初旬は、日司連の新執行部の選挙戦が真っ盛りです。
選挙戦の公約で、「社会的弱者の救済」と言っている候補者もいます。
目を開けて、現実を見てください!(怒)
統計データが物語っています。
社会的弱者の救済はもちろん大事だと思います。
しかし、将来の司法書士界を背負う若者が、このような状態から抜け出せなくて、困っているのです。
若手の司法書士こそ社会的弱者ではないでしょうか。
プロボノ活動は、「生活の基盤がしっかりしている」前提があるからできるはずです。
※プロボノ活動:無料相談会とか、法律を使った社会奉仕
「衣食足りて礼節を知る。」
という、ことわざもあります。
明日の家賃も払えない、明日の生活費にもこと欠いていたらとてもプロボノ活動なんてできないですよ。
このような考えが新執行部の中心になったら、司法書士で困る人がさらに多くなるかもしれません。
それとも彼らは、商売敵になり得る若手をつぶす作戦なのか?
どうやって、プライドを取り戻すか?
日司連には頼れないので、自助努力でがんばるしかありません。
とにかく私は、自分のブランド化が重要と思います。
「なぜ、あの人は、他にも司法書士がたくさんいるのに、わざわざ私に電話をかけてくるのか?」
この答えが「安いから」だったら最悪です。
もっと安い人が出てきらその人に簡単に移ってしまうでしょう。
そうするとさらに安くして、、、などという、安売りのスパイラルにはまります。
「なぜ、あの人は、他にも司法書士がたくさんいるのに、わざわざ私に電話をかけてくるのか?」
この答えが、「自分しかできない仕事だから」だったら最高です。
自分しかできない仕事なら、値段も多少高くても大丈夫でしょうし、プライドを持って仕事をできるでしょう。
私は幸い、「民事信託」という専門性を持つことができました。
何となくラッキーでなったのではなく、民事信託の専門家になろうと、がんばったつもりです。
そのおかげか、この6月のスケジュールは
2週目:東京で民事信託の内容の提案
3週目:札幌で民事信託の設定に関し、関係機関に説明
4週目:沖縄で民事信託の相談
と、新潟にいる私が全国各地から呼ばれて、民事信託の案件を行っています。
毎週出張です。こんな司法書士はなかなかいないでしょう。
これは、私だけしかできない分野があるからだと思います。
価値を認めていただいているのだと思います。
このような仕事だと、さすがに
朝から晩まで、決済代行でかけずり回ることもありません。
「本当はあんたに出したくなかったんだ」とバカにされることもありません。
報酬を10%勝手にピンハネされることもありません。
全て自分のプライドを持って、しかも十分納得できる報酬をいただいて、プロとして責任を持った仕事のやり方をさせていたいております。
しかも、とても感謝されます。
どの専門家に相談しても、「それは、無理です」といわれたことが、私に相談すると「あ、できますよ。安心してください」となるのですから。
そして、高単価の仕事になるので、時間的にも余裕もでき、空いた時間で新しい専門性をつけるために本を読んだり、県外まで研修会に行ったりして、さらに自分の専門性を高めることもできます。
そうすれば、さらにお客さんにも喜ばれる。好循環になります。
もう一度言います。
残念ながら、登記だけでは、差別化や、専門性を発揮できる時代ではなくなりました。、
ですから、あなたも何らかの専門性、自分でしかできない仕事の分野を作ってください。
例えば、僕の回りにはこんな司法書士がいます。
・農地の登記に関するプロ
・動産譲渡担保登記に関するプロ
・中国語や韓国語が得意な司法書士
このような専門分野を作ると、少なくともあなたのお住まいの地域では、その分野に関する仕事は独占できます。
自分の納得できる報酬を請求できるようになるでしょう。
プライドを持って仕事ができるようになるでしょう。
周囲があなたを見る目が変わるでしょう。
登記は、誰もができる仕事で、しかも件数が大幅に減って、大競争時代に入っています。
さらに大規模事務所が大量に登記の仕事を持って行っています。
一般的な登記では専門性を発揮するのが難しいのです。
銀行回りや不動産業者回りをして、「登記の仕事ください」では夢がもてません。
将来の見通しもできないのではないでしょうか。
ですから、プライドを取り戻すためにも、そして安心して生活ができるようになるためにも、自分だけしかできない専門分野を築いて欲しいと思います。
目指してガンバレば、3年間もたった頃には、その分野で一目置かれる存在になっていると思います。
どのようにがんばっていくべきかは、
・その次にプロモーション
・最後に度胸(笑)
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