※ これは、2022/07/09に川嵜のメルマガでの内容を元にした記事です。
こんにちは。司法書士の川嵜です。
今回は障がいのある子(未成年)の財産管理について
私なりの考えをお送りしますね。
正解がないテーマですが、参考になれば。
障がいのある子は、親が代理して対策しておくべきか?
まず、私のスタンスとしては、
・家族が、法律の力(後見や信託ね)を借りずに事実上できることは続ける
・でも家族にムリな負担は負わないようにさせる
・他の家族の理解が得られないことはNG
というスタンスですね。
例えば
認知症の「親」の財産管理。
・子どもが、銀行の代理人カードを持つなどで、できているならそれはOK
・他の、きょうだいからも理解を得る
この状態であれば、
「法定後見」の申立はいらないかな
と思っています。
余計なお金もかからないし、裁判所の報告とか余計な手間もかからないし。
もちろん、
他のきょうだいには、「管理状況を報告してね。」
と伝えます。
このように、日頃からコミュニケーションをとっていくことが、トラブルを事前に防ぐ第一歩かなと思います。
#親族間のトラブルの多くが、「挨拶もない」から始まります
あと、きょうだいといえども、他人の目が入ることがわかっていると、不正を防ぎやすい。
実際、認知症の高齢者は
500万人~1000万人と言われていますが、後見制度を利用している人は、24万人。
5%もありません。
これってほとんどの人が、家族がなんとかしているってことだと思います。
私は、このような考えですから、
未成年の障がいのある子の対策も、実質重視のアドバイスをすることが多いです。
基本路線はこんな感じ
※あくまでも川嵜の個人意見ですので、これが普遍的な正解ではありません。
みなさんも自分なりの考えを持っておくといいと思います。
・親ができるところまで、この面倒を見る
・親が、面倒を見れなくなったら、第三者の力を借りる
⇒ 生活のサポートは施設などで。財産管理は法定後見
他にきょうだいがいる場合でも、任意後見人にしたり、信託を設定することは消極的です。
なぜ、他のきょうだいの協力をあまり期待しない?
負担が大きいからです。
両親(50代)と
長男(22歳)
二男(知的障がい)(17歳)
の4人家族
このようなケースで二男の将来の生活のサポートと財産管理をどう設計するか?
一つは、二男が未成年の間に
任意後見を設定しておくこと。
設定するパターンとしては
パターン1
委任者:二男(未成年) ⇒ 親が代理+特別代理人
受任者:片方の親
(これを両方の親で設定するパターン)
パターン2
委任者:二男(未成年) ⇒ 親が代理+特別代理人
受任者:長男(成人)
パターン1も、パターン2も、
おそらく任意後見は、すぐには発効させないで、
イザというときに発効させることを考えいるのだと思います。
保険的なもの
法的には、少し問題がありますが。
(判断能力が補助程度でも、発効させるのが任意後見の決まり)
イザというときは、どうなる?
イザというときの具体例で、一番多いと考えられるのは、
・親が面倒を見れなくなったとき。
・後は、相続の遺産分割かな?
遺産分割のときは、親が遺言を書いて、執行者を定めておけば
二男のハンコは不要ですよね。
ですから、親の遺言は必須。
もう一つのイザ、親が高齢だったり、病気で面倒見切れなくなったときに
任意後見の発効を考えているんですよね。
でもその時はどうでしょう?
親は、高齢。70代や80代になっているでしょう。
そのような年齢で、
裁判所や監督人に対して、
それまでしたことがない報告をすることができるようになるか?
具体的には
・全ての入出金の領収書を保管して、
・普段は、家計簿みたいなものをつけて
・半年から、年に1回は、財産目録(B/S)と収支報告(P/L)を作る
それまでしたことないんですよ。
70代や80代になってから、はじめるんですよ。
ちょっと、ムリですよね。
では、きょうだいが任意後見人の場合は?
おそらく40代~50代。
結婚しているかもしれません。
子どももいるかも。
仕事も家庭も忙しいはず。
その状態で、それまで、親が行っていた
親が行っていたお金を出し入れや、各種支払いを、タッチ交代。
さらに、財産目録(B/S)と収支報告(P/L)を作るレベルの財産管理を行う。
こちらもおそらく難しい。時間がない。
20代の、独り身のときは、「しっかり面倒を見る」と本音で思っていても
20年後、30年後は状況も変わっているので、
実際は難しくなっている可能性が高い。
となるとどうすべきか?
やはり、第三者による「法定後見」がベターになる。
そうすると、逆に「任意後見契約」がジャマなんですよね。
(任意後見契約があると、基本的には法定後見は発動できないため(任意後見法10条))
ですからこのような事情があるので、
障がいのある子の親亡き後は、
・親ができるときまでは、親が面倒を見る
・できなくなったら法定後見の申立
これが基本路線かな、と思っています。
成年後見人は、実は選べる
専門家では当たり前ですが、案外知られていない事実です。
法定後見(成年後見人、保佐人、補助人)って、実は、選べるんです。
「この人を成年後見人にして」、って候補者を出せる。
もちろんその人が選ばれるかは、わかりませんし、地域によっても温度差があると思いますが、
新潟の場合では、
司法書士 + リーガルサポートの名簿に搭載されていると
候補者は、ほぼ選ばれています。
(ちなみに、当法人も、リーガルサポートの名簿に登載されています)
ですから、将来、成年後見人になってくれそうな、信頼できる専門家を見つけておくといいでしょうね。
その人が成年後見人になれる可能性が高いですから。
このように、
法定後見人は誰がなるかわからない
というリスクはかなり軽減されています。
法定後見も少しずつ、使い勝手が良くなってきていますね。
効果的なのが、「生命保険信託」
1点つけ加えたいことがあります。
お金の承継についてです。
親としては、障がいのある子のために、より多くのお金を残したいはず。
でも、数千万円を子が相続しても、その管理が大変です。
その子に相続人がいない可能性もありますし。
その場合は、生命保険信託が効果的です。
契約者:親
被保険者:親
受取人:生保信託の会社(受託者)
それで
第一受益者:障がいのある子
第二受益者(帰属権利者):他の子(いない場合は、寄付先など)
それで、親が亡き後は、
障がいのある子が毎月10万とか20万を受け取ればいい。
イザというときは、まとまったお金も引き出せます。
障がいのある子が亡くなったら、残ったお金は
他の子や、親族、寄付したい先などに渡すこともできます。
ですから、障がいのある子には、あまりお金を所有させずに
親が生命保険信託に加入することは選択肢になると思います。
生命保険信託は、まだ取り扱う保険会社は少ないですが、今後は広がって欲しいですね。
もういちどまとめると、
障がいのある子の親亡き後は、
・親ができるところまでは、親が面倒を見る
・できなくなったら法定後見の申立(候補者を見つけておくとベター)
・子どもにはあまりお金を持たせない(使うのが難しいため)
・お金の承継は、生命保険信託を活用
これが基本路線かな、と思っています。
(不動産の承継については、ケースバイケースで検討が必要です)
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