信託を学び始めると
・忠実義務
・善管注意義務
この二つがどう違うのか、けっこう悩むと思います。
忠実義務は、利益相反のことでしょ!
う~ん、半分正解です。
でもけっこう難しくて、信託先進国の英米でもまだまとまっていません。
ここでは、僕が学んだことを備忘録的にまとめますね。
僕も勉強中です!
共有の不動産を信託して売却。どこが問題かわかります?
親A、子B
A、 B共有の不動産がありました。
将来、売却予定なので、高齢なAの認知症対策として、Bに信託
こんな感じね
共有持分1/2 名義人B(受託者B、受益者A)
共有持分1/2 名義人B
この状態で、買主が現れました。
Bさんは、売却しても良いでしょうか?
もちろん、信託の目的や管理方針は、売却してOK
普通だったら、売却OKですよね。
ところが・・・
売却すると、Bの忠実義務違反になる?!
これかなり難しい問題です。
僕も今までは、スルーしていたかもしれません。
まずは、善管注意義務と忠実義務はどう違うのか?
善管注意義務は、ざっくり言うと、損害を発生させない義務です。
ですから、売買の場面では、
適正価格だったり、
より高く売れれば、善管注意義務的にはOK。
もちろん後日のトラブルも回避する形でなければ行けませんけどね。
でも、忠実義務は違います。
忠実義務は、受益者以外の者の利益を図ることを禁ずる義務です。
例えば、次の事例(冒頭の事例と異なります)
甲から乙に不動産を信託
信託の目的は、不動産の売却
受託者 乙
受益者 甲
甲さんはより高く不動産を売却したい。
でも買主がなかなか現れません。
それを見かねて、乙の子どもが買いたいと言ってきた。
しかも、不動産鑑定士の鑑定に、少し上乗せして買うとのこと。
さあ、この売買、どう思います?
善管注意的には、OKでしょう。
受益者におそらく利益になる取引、だからですよね。
しかし、忠実義務では、NGになる可能性があります。
忠実義務は、受益者以外の利益を計ることを禁止しています。
この取引により受託者の子に利益が生じるかもしれません。
つまり間接的に受託者の利益になる。
そうすると、この取引は
善管注意義務ではOKでも
忠実義務ではNGになる可能性があるのです。
冒頭の事例で考え直すと
A持分をBに信託
共有持分1/2 名義人B(受託者B、受益者A)
共有持分1/2 名義人B
このような状態ですね。
この不動産を売却すると、回り回って、B個人にも利益が生じてしまう可能性があります。
そうすると、忠実義務違反になる可能性がある。
あくまでも可能性ね。
忠実義務違反とは?
一方で、この忠実義務って難しいんです。
どうゆうときに忠実義務違反になるのか?
信託先進国の米英でも、様々な議論があり、いまだに定まっていないようです。
忠実義務違反で、典型的なのは、利益相反。
信託法31条1項各号と32条1項に書いてあります。
典型的なのは、
・買主が現れたのに、信託財産を売らずに、受託者の個人の財産を売っちゃうとか。(法32条1項)
でも、受託者の子どもに売るとかって、31条や32条に書いていない。
だから30条で包括的に忠実義務を規定しているんですね。
(忠実義務)
第三十条 受託者は、受益者のため忠実に信託事務の処理その他の行為をしなければならない。
信託の趣旨から行くと、忠実義務は、
受益者以外の利益を計ることを禁止すること。
そうすると今回の売買により、受託者Bも利益を得ることになる。
つまり、忠実義務違反?
うーん、難しいですね。
わかる人いましたら、教えてください!
回避する方法は?
あります。
忠実義務の効果は受益者に対する透明性の確保なんですね。
受託者が、受益者に対して包み隠さず明らかにすることにより、透明性を確保した上で、受益者が了解すればOKとなります。
法31条2項2号
法32条2項2号
で、重要な事実を開示して受益者が承諾すればOKと書いてありますね。
会社と取締役の利益相反の規定もそう。
株主総会で重要な事実を開示して承認すれば、利益相反取引がOKになりますよね。
(会社法356条1項)
つまり透明性の確保。
そうすると今回の取引も
受託者であり、共有者でもあるBが、Aに重要な事実を開示して承認してもらえばOKとなります。
ていうか、重要な事実は共有者がBであることだから、
ま、最初からわかっていることなので問題にならないでしょうが・・・(笑)
このように、忠実義務を考えると、今回のような深ーい問題があると言うことを気にかけてくださいね。
僕も勉強中ですので、今後も一緒に勉強していましょう!
ご意見やご指摘ありましたら、ぜひお願いいたします!
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